今回は、大分県稲葉学園高等学校にて女子サッカー部を率いる横田悠樹監督にインタビューをさせていただきました。ご自身の指導者への道のりや、iDEP導入のきっかけ、導入後の変化、そして育成年代への指導についてなど、詳しくお話を伺います。
「好き」から開かれた指導者への道
本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございます。まず、横田監督のこれまでのご経歴についてお聞かせいただけますでしょうか。大学卒業後、中国の蘇州という街でクラブチームを立ち上げ、小学生から中学生までの子どもたちにサッカーを教えていました。対象は日本人生徒、中国人生徒、インターナショナルスクールに通う生徒と様々でした。約2年半指導した後、母校である大学に戻り、7年間コーチを務めました。そして、現在の稲葉学園には2021年から在籍しています。
中国でクラブチームを立ち上げられたとのことですが、そのきっかけは何だったのでしょうか。
高校時代の同級生が中国に留学をしていまして、その友人から海外でサッカーを教えられる人材を探しているという話をいただいたのがきっかけです。私自身、高校時代にスペインへ留学した経験もあり、海外で働くことに興味がありましたので、渡航を決意しました。
高校時代にスペインへ留学されていたのですね。はい。スペイン南部のアルヘシラスという街に留学していました。中学時代、FCバルセロナというサッカーチームが好きでして。ロナウジーニョとか、海外のプレイヤーがものすごく楽しそうにサッカーをする姿に感銘を受けたんです。それを実際に感じたいと思い、スペインへの留学を志しました。母がスペインに留学していたこともあり、両親も後押ししてくれました。やりたいことに対して協力してくれた周りの人たちに、本当に感謝しています。
もともと指導者を目指していたのですか。中国でサッカーを教えることになったのが、指導者としての最初のステップですが、最初は特に指導者になろうと思っていたわけではありません。「サッカー」と「海外」という2つの好きなことを追求していくうちに、自然と道が開けました。
新天地、稲葉学園で監督へ就任
*本人提供
大学のコーチを経て、稲葉学園を選ばれた理由は何ですか。大学では、指導者のA級ライセンスを取得することを目標としていました。5年目にそのライセンス取得という目標を達成し、さらにその後大学も全国でベスト8に入ることができたので、自身も次のステップに進むタイミングを感じていました。いくつかの学校からコーチとして迎えたいとお声がけいただきましたが、その中でも「監督」で、と声をかけていただいたのが稲葉学園だったんです。また、①女子高校生チーム ②監督 ③教員、という、これまでやったことのない3つの要素に魅力を感じました。実は教員免許も持っているんですよ。やったことのないこと、新しいことへのチャレンジに対して、すごく魅力を感じるんです。いろんなことに挑戦したい!という僕の性格なんでしょうね。
女子高校生への指導は、これまでの指導経験と比べていかがですか。男子大学生の指導とは全く異なりますね。大学生の場合は、サッカーの技術指導が中心でしたが、高校生は、サッカーだけでなく生徒のメンタルケアや人間関係、進路など、多岐にわたる問題に対応する必要があります。高校生の場合、今後サッカーを続けるという子たちばかりではないですし。ただ、地元を離れ寮生活をしてまで頑張りたい!と思っている子たちに対して、夢を叶える環境整備をしっかりしてあげたいと思っています。
チームの状況はいかがですか。本校女子サッカー部は大分県竹田市と協力体制を取っており、サポートも手厚く、大変助かっています。大分には女子サッカー部がある高校が2校しかないので、常に切磋琢磨している状況ですね。もう一校はかなりの強豪なのですが、その差は確実に縮まってきていると感じています。結果だけでなく、生徒の人間性や進路なども重視し、チームの価値を高めようと努めています。
日々の指導で大切にしていること、気をつけていることはありますか。「サッカーは楽しいもの」という考えを原点に、各年代ごとに大切なこと・必要なことを伝え、サッカーを好きになってもらえるよう指導しています。
現代の生徒には、抽象的な指示だけでは伝わりにくいと感じています。具体的な指導が必要だと感じる場面も多々あり、一つ具体的な指導・解答を与えながらも、その上でプラスアルファを個人で探していく、というスタイルの方が伝わりやすいように思いますね。
iDEP(イデップ)導入で、選手とのコミュニケーションが深化
*本人提供
海外等で取り入れられていることは知っていましたが、実際に指導に取り入れたことはありませんでした。
iDEP導入前には、どのような課題がありましたか。振り返りにはサッカーノートを活用していましたが、必須にはしていませんでしたので、主体的な生徒しか提出せず、コミュニケーションが限定的になることがありました。また、以前使用していたコンディション管理アプリでは、コンディションの面は把握できても、生徒自身の課題に十分気付けない面もありました。
iDEP導入のきっかけは何でしたか。選手には、もっと自身と向き合ってほしいと考えていました。そんな時、iDEPに出会い、「これを使えば自身の課題と向き合い、解決できるのではないか」と期待したのです。このチームには、自分自身と向き合うという姿勢が非常に大事だと考えていたので、iDEPはまさに理想的なツールだと思いました。
iDEP導入後、チームにどのような変化がありましたか。サッカーノートは強制していませんでしたので、選手自身の主体性に任せるところが大きく、そこは少々問題視していました。iDEPを活用することで、こちらからの評価も伝えられ、選手とのコミュニケーションが円滑になったのは大きいですね 。コミュニケーションが以前より深くできるようになったため、選手自身が成長を実感するようになったのも嬉しい変化です。今ではiDEPを活用した練習メニューを考えるようにもなりました。
コーチの方々からの反応はいかがですか。生徒たちがこのようなシステムを利用できることを非常に喜んでいます。iDEPを使った選手たちの今後の進化に期待しているようです。
iDEPを使ってみて、いかがでしょうか。今の子たちは、やはりデジタルの方が取り組みやすいのかもしれませんね。
iDEPは、自身の問題を可視化してアプローチしていく、ということが目に見えていいシステムだと思います。選手自身が可視化した目標に対し、こちら側がその目標を達成するための道筋を作ってあげるのに大変役立っています。我々も選手のIDPを確認し、使えそうなメニューを事前に考えておいたりもしています。
ただの個人練習ではなく、自分でIDPを設定したり、我々と話し合ったものをiDEPで管理して個人練習に取り組む、という機会が増えてきて、実際成長している選手が増えたな、と感じています。iDEPを活用して変化している子が周りへ与える影響もありますね。
iDEPに対して、ご要望はありますか。我々が昔使っていた手書きのサッカーノートの良い部分と、サッカーノートだけでは足りなかったこと、手が届かなかったことをiDEPでは補完できているので「現代版サッカーノート」としてもっと上手く活用していきたいですね。
卒業後もiDEPのデータが見られると選手たちは嬉しいと思います。iDEPに蓄積されたデータは、選手たちの成長の記録であり、卒業アルバムのような形で出力してあげたいな、と思っています。コンディションや試合へのコメント、取り組んできた自主練習の結果など、きっとiDEPのデータは卒業生への素晴らしい贈り物になると思いますので。
チームの目標は全国大会出場、そして選手それぞれの夢を叶えること
*本人提供
今後のチームの目標をお聞かせください。チームとしては全国大会に出場することを目標としつつ、個々の生徒の目標達成を支援しています。私自身、選手それぞれできることが増え、サッカーを楽しいと思ってもらえるのがとても嬉しいです。みんな夢は異なりますが、全員が生き生きとサッカーを楽しみ、全国大会に出場、そして勝利を掴みたいですね。
監督ご自身の目標などはありますか。
教え子から「コーチのおかげでサッカーが好きになった」と言われたことが私にとって自信にもつながり、とても印象に残っていることです。今後も「サッカーが好き」「サッカーが楽しい」と思ってもらえる人を増やしたいですね。
さらに、私自身としても、次世代の育成に積極的に携わっていけるようさらに勉強を重ね、Jリーグや日本代表のコーチなども目指したいと思っています。
*本人提供
本日は貴重なお話、ありがとうございました。稲葉学園高等学校女子サッカー部、そして横田監督のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
インタビューを終えて
今回の取材を通して、横田監督の「サッカーは楽しいもの」という信念と、選手一人ひとりの成長を心から願う情熱が深く伝わってきました。育成年代への指導の難しさ、そしてiDEPの導入から選手たちの主体的な成長を促す取り組みに加え、教員としての指導…私たちの想像以上の苦労があったことかと思います。そんな苦労を露ほどにも感じさせず、サッカーの楽しさ、学生への指導のやりがいを熱く語ってくださった横田監督の笑顔が印象的でした。
iDEPの活用によって、選手自身が課題を可視化し、主体的に練習に取り組むようになったというお話は、育成年代の指導における新しい可能性を示唆していると感じました。
横田監督が目指すのは、チームとして全国大会に出場すること、そして選手一人ひとりがそれぞれの目標を達成できるようにサポートすること。そのために、iDEPを現代版サッカーノートとして活用し、選手たちの成長を記録・可視化することで、卒業後も役立つ財産となるようにしたいというお気持ちに、私たちも大変感銘を受けました。
今回の取材で伺った横田監督の言葉から、育成年代の指導におけるヒントや、選手との向き合い方について多くのことに気付かされました。横田監督、そして稲葉学園女子サッカー部の今後の活躍を心から応援しています。ありがとうございました。