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サッカー元日本代表の第二の人生(後編)

作成者: Admin|2024.04.15

 

元プロサッカー選手徳永悠平さんのキャリアインタビュー

IDPについて

Q:まずは、「IDP」という言葉は知っていましたか?

徳永悠平: はい、日本サッカー協会も全国の指導者などと共有するビジョンとして推奨していますよね。言葉としては知っていたのですが、正直、詳しくは知らなかったですし、意味を深くは考えたことはこれまでなかったですね。実際に今回お話を伺ってみて、選手個人個人にフォーカスした成長プランやパフォーマンスプランということを詳しく聞きました。最初に話を聞いてみて思ったことは、大谷翔平選手が学生時代につくっていた、マンダラーチャートに近いのかもしれないと思ったことと、自分は今、セカンドキャリアを歩んでいますが、サッカーの育成に限らず、他の分野にも、そしてビジネスや、今後の夢を掴むためにも「IDP」って非常に重要だなと感じましたね。

Q:現役時代に戻れるのであればIDPの作成や、活用はしたかったですか?

徳永悠平: 活用したかったと強く思いますね。現役時代というよりも、中・高校生時代などからI D Pに向き合い、しっかりと取り組んでいたら、また選手としても人間的にも、幅が広がっていたかもしれませんね。私も学生時代は日々、サッカーノートなどは記載していた習慣はあったのですが、漠然と大きな目標設定や、日々の反省や思ったことなどを記して振り返る為だけの活用となっていました。I D Pを明確に作ることで、もっと具体的に、中長期的な目標設定、今の自分に何が必要なのか、そのためにはどのようなアプローチをしたらいいのか、自分で考える機会が増えるし、習慣化されますよね。監督やコーチへの質問の仕方や、「質」が変わると思うし、自主トレーニングの内容なども変わっていたと思いますね。取り組みの「質」が高まるということですね。時間は有限ですからね。

〈国見高校時代 全国三冠達成〉

〈国見高校時代 DF,FWと様々なポジションをこなした〉

Q:徳永悠平さんが今、現役時代に戻れるとしたらどのようなIDPを組み立てるのか、今回は事前にしっかりと考えてきていただきました。

徳永悠平: 大事な要素が沢山あるので、なかなか難しかったですよ。(苦笑) でも改めて、振り返る良い機会でしたね。

今、現役に戻れるなら、私ならこのように組み立てますね。

【メンタル】

どうなりたいか:何があっても動じないメンタル

そのために何をするか:一喜一憂しないこと、弱みを見せない、ブレないことです。

まず、本当にサッカーって「メンタルのスポーツ」だなと強く思いますね。

1番大切な要素だと思っています。プレーヤーとして常に成長し、トップにいく為にも必ず必要な要素。負けん気や自信、向上心や人の意見を聞き入れる傾聴力、ポジティブシンキングなどメンタルの中にも様々な要素があると思いますが、どんなにプレーが上手でもメンタリティの部分で足りない部分があると、結果が出せません。練習ではめちゃくちゃスーパーなプレイをするんだけど、試合や重要な場面ではプレッシャーに負けてしまい、力を発揮できない選手は沢山みてきました。育成世代にも言えることだと思いますね。

当然結果を出し続けることは、かなり難しいですが、ではその時にどうするか、どのような取り組みを日々行うか、まさにその部分を日々のIDP設定の重要な部分にし、追求していきたいですね。

メンタルの強い、弱いとかって、持って生まれた能力だと思っている方も多いと思いますが、私は違うと思いますね。

メンタルだって、日々の向き合い、考え方を努力する、習慣化することで強さを身につけることができる。コントロールできるようになるものだと強く思います。常にトップの舞台を想定した日々が大事で、世界の大舞台を意識して、これは普通。このレベルは当たり前。など思えるかどうか。その中でプレーができているかどうかですよね。代表やオリンピックの舞台でも外国人選手のメンタリティ、強豪国の選手たちとの差はここだなと強く感じましたね。

©︎ Getty Images/ Stanley Chou

 

【フィジカル】

どうなりたいか:球際で誰にも負けない

そのために:体幹やアジリティトレーニングの継続、ぶつかり方の研究、体力

いつ:練習後の自主練、練習中からの試行錯誤

フィジカルの強さ、インテンシティの強度は、現代のサッカーでは、必ず必要な要素ですね。結局は個と個の闘い、そこで負けていては絶対に試合に勝てないですからね。

フィジカルと一括りにして語られますがその中には、相手とぶつかって負けない体の強さや、90分を通してパフォーマンスを落とさず走り切る体力、切り返しについていけるアジリティ、ヘディングに負けないジャンプだって含まれています。このようにフィジカルの中でもたくさんの要素があるのでここからさらに細分化をして課題に対して一つ一つ細かくアプローチすることができますよね。高校時代の自分だったら、体力をつける、そのために走る。くらいの目標設定しかできていなかった。いろんな場面を想定し、できている部分、できていない部分を明確にすれば、トレーニングのやり方は変わっていたなと思います。ヘディングで負けないこと一つにとっても、ジャンプするタイミングや手の使い方、相手との距離感など様々なテクニックも必要ですからね。

©︎ Getty Images/ Masashi Hara

 【技術】

どうなりたいか:ビルドアップのミスをしない、判断を間違えない

そのために:トレーニング中から丁寧にプレーすることを意識する、試合の動画を見て判断の確認

いつ:トレーニング中、自宅

僕は主にD Fとして プレーしていましたけど、現代サッカーではD Fに様々な技術が求められます。ボールをクリアするだけでは通用しないということですね。ボールを扱う技術が必要なことはもちろんのことですが、常に判断が伴うし、対人プレーでの技術なども必要です。このような技術を高いレベルで併せ持つD Fが今、世界で求められているプレイヤーと言えるでしょうね。昔は、「強い」ディフェンダーが評価基準だったように思いますが、そこは前提として、うまさや、判断、スピードなどの要素が求められています。そこにフォーカスしたトレーニングや振り返りを行いたいですね。ここはクリアではなく、パスをつなげられた。ここはパスではなく、クリアすべき場面だったなど、常に判断が求められるし、判断のスピードも速くなっている。追求しなきゃいけない。時代が変わるようにサッカーの主流や流行も変わっていきます。このような流れに対応するにはやはり映像も見ないといけないですし、何を重要なのか、どういう選択肢があるのかなど、見る視点も変わってきますね。最近は特に遠藤航選手の映像など見ていますね。ドイツでやっていた時より、どう変化させているかとか、多分こうだからかなとか、勝手に想像しながら見ていますね。笑 あの舞台で当たり前にやっているメンタリティがすごいです、そこが大事ですよね。

【ポジショニング】

どうなりたいか:常に正しいポジショニングを取り続けること

そのために:常にポジションの確認を行う、全体の把握をできるようになる。

いつ:試合中、トレーニング中

年齢を重ねるにつれて必要になってくるのが、ポジショニング能力だと感じます。身体能力だけでサッカーをしていると限界がきますね。自分はどちらかというと最初は身体能力でサッカーをしているタイプでしたが、比較的長く現役を続けられたのは、ポジショニングに対する考え方などが段々と変わったこと。その部分が大きいのかもしれません。でも気付くのが早ければもっと長くできたかもしれません。レベルが高くなってくると身体能力や個人の能力だけでは守れないシチュエーションも出てきます。やはりポジショニング能力や、チーム全体としてのポジショニングでカバーしないといけないです。ポジショニングもしっかりと意識してトレーニングを行えば身につけられる能力だと思います。頭と身体に入ってきます。

【怪我をしない体】

どうなりたい:怪我をしない強い体を作る。

そのために:体全体の可動域を広げる、口に入れるものを選ぶ、しっかり休む、ケアをしっかり行う。

いつ:トレーニング外

長くプレーするためには必須ですね。怪我をして長期の離脱になったり、思い通りのプレーができないことって選手からすると一番フラストレーションが溜まります。焦りにも繋がるし。サッカーは平均選手生命が短いスポーツのですので、大切にしたいI D Pの一つ。怪我をしない体を手にいれることで長くトップレベルでプレーすることが可能ですね。私自身も現役時代はあまり怪我をしなかったからこそ、長くプレーできたと思います。

【適応能力】

どうなりたいか:自分の色も出しつつ、常にチームの方針に適応し続ける。

そのために:チームが何を求めているのか感じ続ける。

いつ:クラブハウス内

適応能力も必要な能力の一つにあげたいですね。特にプロサッカー選手は移籍がつきものです。また所属チームの監督交代もたくさん経験してきました。こうした経験をして感じたことは適応力がある選手はどのチームであろうと、監督が誰であろうと結果を残すことができていますよね。FC東京の長友佑都選手なども海外でやっている時から監督がどんどん変わって、次から次に良い選手が来るのに、結局はレギュラーのポジションを取り戻して試合に出てましたよね。すごいなあと思います。

【コミュニケーション】

どうなりたいか:D Fラインからの声出しをもっと的確に。

そのために:かける言葉を選定する、チーム内に浸透させる、練習中から的確な声出し

いつ:トレーニング中、ゲーム中

コミュニケーションはチームスポーツなので必須ですね。自分自身は派手な性格やプレースタイルではありませんでしたが、チームのために厳しいことを言わないといけない時は真っ直ぐに自分の意見を伝えることはしていたと思います。他の意見を聞き入れることも成長のためには重要です。また相手へのリスペクトを持つことがコミュニケーションを取る上で大切なことだと思います。またしっかりしたコミュニケーション能力があると海外移籍や国内移籍などでも孤立することなく、スムーズにチームの輪に入ることができるんじゃないですかね。私個人としても、まだまだ伸ばしたい能力の一つです。そういう意味では、引退後も大事な要素ですよね。引退後は特にコミュニケーション能力や対人関係が増えていくので、そういう面でも必要な能力だと思います。現役時代、育成時代から意識しておくべきだなと強く思います。積極的に自分から声をかけることですね。

【体調管理】

どうなりたいか:シーズンを通して体調不調を起こさない

そのために:口に入れるものを徹底する、ストレスを溜めない、しっかり休む

いつ:トレーニング外

怪我をしない体と同じように重要な能力だと思います。体調を崩さないように生活を整えることが重要ですね。ストレスも溜まりますから、たまには発散もしながらですね。うまくバランスを取ることが重要だと思います。これも体調管理の一つと言えますよね。丈夫な体を作るのはトレーニングのほかに食事がとても重要です。食事が体をつくると言っても過言ではありませんよね。常にチームのために闘える選手って体調管理は最低条件。育成世代からここは特に意識してほしいですね。3食しっかり食べるのは前提で、捕食や、タイミング、体への負担を避けることなども意識してほしいですね。

 

Q:ありがとうございました。まだまだ細かく聞きだすとキリがないくらいIDPについて話していただきましたが、日本のサッカーが今後、世界と戦うために、iDEPは有効だと思いますか?

またその理由をお聞かせください。

FC東京では長きに渡り活躍、オリンピックには2大会出場した〉

 徳永悠平:引退して時間が少し経ったというのもあるし、振り返ることが多かったので、サッカーや、IDPとかの話を聞くと喋りたくなりますね。笑 日本サッカーが世界と戦うために必要なことは個人の能力アップと、日本の強みである組織力だと思います。その中でIDPをここまで追及させる、落とし込ませる「iDEP」のサービスは素晴らしいですね。個人のレベルアップのために特に有効的だと感じています。今まで自分の強みと弱みを言語化できていない選手が多くいたと思いますが、I D Pを作成し、iDEPで活用していくことで、多くの選手が自分を理解することができると思いますね。あと、これは本当に大きな要素、私が当時感じた世界との差は最初の方にも話しましたが、「当たり前感」なんですよね。結局、技術面や、力には世界と大きな差はそこまで無いなと感じました。ただ、世界のあのトップの舞台でやること。あの場面というのは彼らにとっては、「当たり前」なんですよね。普段から確実に世界の舞台が当たり前で、あの場面で力を発揮するために日々の取り組みがなされている。そこの感覚の差、文化の差という意味で、日本はまだまだ改善していかないといけない部分があると思います。

Q:徳永さんは今、サッカースクールなども定期的に行なっていると思いますが、指導者の目線からすると、iDEPの魅力は何だと思われますか。

〈サッカースクールなども定期的に開催〉

徳永悠平:指導者も、このiDEPを使って選手の特徴に合わせて、それぞれ細かくアプローチできますよね。選手がどのような目標設定で日々サッカーに向き合っているのか、選手の考えや思いがわかっているので、指導する側のアプローチの質も当然変わってきますよね。他にも日々のコンディションや、試合のデータ、フィジカルデータなどにも、デバイス1つでいつでもどこでも、データにアクセスすることや管理することが可能になっているし、生産性向上にも大きく繋がりますね。日々選手の成長する過程のデータも蓄積されていくわけですから、プロになった選手が過去どのような取り組みをしているか、どんな推移で、フィジカル面や体組成の部分など変化したか。がデータとして残っている、そんな素晴らしいデータがチームの資産として残せるのは本当に大きいと思いますよ。このように個人の能力が成長する仕組みを整えることができれば、ますますiDEPが利用されるようになり、とんでもない個性を持った選手がどんどん誕生するんじゃないですか。こうしたI T技術を駆使したサービスが生まれる時代ですから個人の能力は底上げするために利用しない手はないですね。何よりも、目標設定、振り返り、を繰り返す、習慣化されることが大きい。私自身もセカンドキャリアを歩む上で、日々やっていかないといけないなと強く思います。

〈功労選手賞を受賞〉